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2021年11月18日

抑えられない食欲が襲う、過食症とは

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摂食障害の中でも「抑制できない食欲で必要以上のものを食べてしまう」過食症。今回は、過食症についての記事です。

そもそも過食症って?

過食症とは、正式には神経過食症(BN: bulimia nervosa)といわれます。拒食とは一転「食べ過ぎる」という特徴を持ちますが、極端な体重増加への恐怖や歪んだ自己イメージなど心理的な症状は拒食症と共通するものがあります。心理的症状と身体的症状に乖離が見られることから、抑うつ症状等の二次障害を生みやすいことも特徴的です。

BNは20-29才に多く90%が女性です。多くは発症前にダイエットを経験し、ANから移行することもあります。
むちゃ喰いは、一定の時間内にほとんどの人が同じ時間・状況で食べる量よりも明らかに多量を食べ、食べることを止められない感覚を伴います。体重増加を防ぐための絶食や嘔吐、下剤・利尿剤乱用などの代償行動を行います。自己評価は体型・体重に強く影響され、やせ願望や肥満恐怖、身体像の障害も伴います。むちゃ喰いと代償行動の頻度が少なくとも3ヶ月間にわたり週2回以上の場合、BNと診断します。

厚生労働省 e-ヘルスネット(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-005.html)

厚生労働省の情報では、多くの方がダイエットの反動から過食症へ移行していることが分かります。(※必ずしもダイエットを経験しているとは限りません)ここで言う「むちゃ食い=過食」は単なる「食べすぎ」とは異なり、自身でコントロールができない状態に陥り一定の時間内に食べ物を詰め込むことが特徴的です。

過食衝動は、ときに「発作」「スイッチ」「オバケ」と称されることがあり、病の症状であることを自他共に理解することが重要になります。

よく間違われることがありますが、過食症は「食べたい病」ではありません。逆に「痩せたい病」です。実際に過食をしているとき以外はダイエットや断食を行っている人が多くいます。そのため、意思に反して過食をしてしまったことに対して代償行為が行われることがしばしばあります。

※代償行為については別記事で詳しく取り上げます

過食症には、過食嘔吐と非嘔吐過食がある

過食症の中にも、自発性嘔吐を伴う「過食嘔吐」と、嘔吐を伴わない「非嘔吐過食」があります。どちらの方が摂食障害の症状が重い、という話ではなく、それぞれに異なった苦しみが伴います。

過食嘔吐

文字どおり、過食と嘔吐を伴う過食症の状態です。食べたことをなかったことにする行為(代償行為)としての嘔吐を始まりとしますが、過食から嘔吐を一連の発作として依存対象にする方が多くいます。自発的嘔吐自体が自傷行為として働く人、本能的な快楽行為として働く人など、嘔吐行為の位置付けは人により異なります。


非嘔吐過食

対して嘔吐行為を伴わない過食症の状態です。「嘔吐を伴わないから症状が軽い」という訳ではなく、過食嘔吐とは異なる苦しみも存在します。また、嘔吐は伴わなわなくとも、下剤や利尿剤の乱用など他の代償行為が見られるケースもあります。

過食は意思の問題ではなく「症状」

過食嘔吐、非嘔吐過食ともに明らかに低体重とは限らず(=見た目だけでは分からない)、人前では症状が出ないケースも多いことから、理解が得られづらいのが現状です。しかし、本人の心の中は常に不安と隣あわせ、少しのストレスでも壊れてしまうようなギリギリの状態です。過食症の症状は、しばしば不健全なストレスコーピング(ストレス対処法)としても働いています。

拒食状態から食べるようになったことから周囲から「食べているなら大丈夫」と言われることや、摂食障害の社会的認知が主に拒食症に寄っていることから「痩せていないから摂食障害でない」と言われてしまうことも。また、症状としての過食と単なる食べすぎの違いを理解されづらいことから「食べなければよいのに」「やめたければやめればいい」などと、本人の苦しみがうまく伝わらないことも過食症の苦しみのひとつです。

過食症の過食行為は、症状であり本人の意思でコントロールできるものではありません。

自分の意思と反して身体が動いてしまうことへの恐怖を想像し、過食症の苦しみを少しでも理解しようと考えられる人が増えることを願います。そして、今過食症に悩む方が「過食は弱い自分のせいだ」と更に自分を責めてしまうことがありませんように。

過食症の正しい認知が広まることが願います。

参考:
・厚生労働省e-ヘルスネット(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・摂食障害 Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%91%82%E9%A3%9F%E9%9A%9C%E5%AE%B3
・10代のためのもしかして摂食障害?と思ったときに読む本

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