”摂食障害は自尊心の病”ってどういうこと?
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今回は精神分析医のヒルデ・ブルックが提唱した、「摂食障害は人にどう見られるかという自尊心の病である」という言葉について考えたいと思います。
低い自尊心、高い自己愛
摂食障害を調べていくと必ずといっていいほど出てくるのが「自尊心の低さ」というキーワード。ある本には、摂食障害は「自信のなさ」や「自己嫌悪」など自尊心が低いことが問題だと書いてあります。
一見もっともらしく聞こえる自尊心の問題は、その根底に横たわる問題についてよく考えてみるとより深い問題が存在することがわかります。
バウマイスターら(30年に1万5000以上の調査を行った心理学者)の報告は、自尊心と成功のあいだの相関関係は実質的に皆無であるという根拠に満ちていた。
ユーリック『insight(インサイト)』英治出版
(中略)
そして大学生に自尊心があるからといって、社交が周りより上手くなるわけではなかった。職場では、自尊心が高くても同僚との関係が向上するわけではなかった。(中略)成功していない人物が自尊心を高めると、パフォーマンスが向上するどころか低下するという指摘だった。
(中略)
そもそも、アメリカ人の多くが苦しんでいる病は、実は「自尊心の低さ」ではなかったのだ。自尊心を高めるべきだと主張する者たちは「自己愛の欠如を嘆いて」いたが、自尊心のレベルは着実かつ手に負えないほど高くなっていたのである。本当の社会の病は、多くの人間が(たいては何の客観的な根拠もなく)、自分を高く見積もりすぎていることだったのだ。
自分を高く見積もりすぎるということは、同時に理想像を大きく引き上げ、結果自己嫌悪になりやすい状態を作ります。摂食障害の場合、体重や体型にそれが過度に依存している状態です。(体重や体型の過大評価)
体重と体型にコントロールされる脳内
自分の価値の大部分、あるいはすべてが、体型や体重と、それらをコントロールする能力で判断されてしまいます。過食や過食嘔吐によってそれが可能になる、自分にはそれができるという信念そのものが、「自分を高く見積もりすぎている」ということです。
このようなタイプの人たちを「過敏型自己愛性パーソナリティ」と考えると理解しやすくなります。世間の目を気にして、空気を読むなど、他人が自分をどう見ているかという評価には敏感ですが、頭の中の他者が大活躍しているだけで、実際の他者の気持ちには関心がないのが特徴です。
心の充足感が得られず、つねに不足感や欠如感、空虚感を持ち、快楽と興奮、刺激を過剰に求め傾向にあります。そのため、短時間で病的な快楽を得られる自己破壊行動(この中に過食も含まれます)に手を出すのです。
まとめ
摂食障害を持つ人の共通点として、自己愛が強く、その結果自己肯定感が低く理想像の高さから自己嫌悪に陥りやすい人が多く見られます。
刺激的な快楽を求めるのではなく、日常の小さな喜びを書き留めておく練習をしてみると少しずつ見える景色が変わるかもしれません。
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